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いつぞやのガンダ屋にて

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日中、就農以来お世話になっている知人(とは言え、親子ほど歳は離れている)の所へ、
ヌカや籾殻などの資財を回収しに行く。彼は、農業の旁、農機をはじめとする産業機械
類の整備や販売も手掛けているので、自分にとって諸々の相談がしやすい、とても
ありがたい方。

到着して暫く談笑をした後、ちょっと機械類の回収相談をしに行かないといけない
ので、私の軽トラを出してくれと言う。それも毎度の事。お世話になりっぱなしな
自分としては、些細な頼まれ事も嬉しいものだ。すぐに二人で先方宅へ。
彼の作業場から10分程度の近所へつくと、おばあさんがお出迎え。片付けて欲しいと
いう倉庫を案内される。中にあるものは、状態の良いコンプレッサーや高圧洗浄機、
外壁塗装用品一式など、今すぐでも使えそうな仕事道具の山。大きなスピーカー、
そしてだいぶ古いオフロードバイク。モトクロスで、昔は何度も優勝していて、
トロフィーも沢山あったとおばあさんは言う。

知人は、速やかに回収の相談を始め、おばあさんも段取りを一生懸命に考えている。
しかし、自分はモヤモヤした気持ちになって仕方がない。

『これなんかどうだろな、いけるかな?』

全くいつもの調子で機械を指差し、私にも見解を求めてくる彼。私は、その家から
してみれぱ見ず知らずの男なので、それに返答するのもだいぶはばかられる。そこで、
意を決し、

『恐れ入りますが、これらは遺品でしょうか?』

と、おばあさんに訊ねる。
おばあさんは特に間を置くこともなく、そうだと答える。表情に変化はなく、むしろ
私が最初に挨拶したときのほうが訝しそうだった。そして、所有者が生前何をなして
いたのかを簡単に淡々と話してくれた。

話ぶりから、悲しく思う気持ちは伝わってくる。けれども、現在は不用品の処分の
ほうへ意識が向いているのだろう。
オートバイを遺族が廃車するにはどうすれば良いかとか、そういった質問がこちらにも
来る。受け答えをしているうちに、何故かお互いに表情が柔和になっていた。

結局、以降少しずつ運び出すので不用品と要るものを、現在所有権のある遺族と
調整しておいてくださいという話になり、今日は確実に不要な木材やスピーカー、
自転車などを運んできた。

『この自転車、どこも悪くねえから直ぐ乗れっど。あんだ、あとこの掃除機も持ってけ。』

少しおばあさんに笑みが見える。そうですねーと笑いながら、それらを積み込んだ。

帰りの車の中で、どうだったかと尋ねられる。機械の云々ではなく、こういうケースを
どう思うかという質問だと、なんとなく察する。

『向こうもこちらもやりづらい気持ちはあるでしょうけど、そういう状況になると、
ご遺族は割りきるしかないんでしょうね。亡くなったご本人も、自分が死ぬなんて
あまり考えていなかった様子がよく分かりました。自分も少しはを死を意識して生活
したほうがいいかなとも思いました。』

そんなふうに答えた。

『あれな、いくらで回収すればいいと思う?』

正直、使えるものが多いとしても、それを直ぐに必要とする人がそんなにいるとは
思えない品物ばかりだ。しかし、自分ならば、ご遺族の気持ちには少しでも誠実な
対応がしたい。

『うーん、難しいな。』

暫く考え込むんでいると、10万出そうと思うと言う。普通の回収業者なら、半額以下で
全部かっさらうんじゃないかと言うと、その通りだと言う。死んだら何でも一山いくらに
しかならんのだと。でも、俺は10万出したいんだと。人の足下を見たくないんだと。
儲ける気もないが、10万出したら、なんとかトントンかそれ+アルファにしなければ
ならないと。

ああ、だから向こうも彼に依頼をするんだとよく理解出来た。身近にいた人の遺品は、
出きるだけ身近な人のところへ。そして真剣にそれを必要とする人を探してくれる、
もしくはそういった人の集うところへ。ご遺族にとっては、それが故人を弔う上で
大切な仕上げなのかもしれないなと感じた。

彼に言わせると、儲かる仕事、損する仕事、トントンの仕事。それらがセットでひとつの
仕事なのだそうな。選ばずにバランス良くしていれば、儲かりも潰れもしない。そして
続けてゆくだけのお金にも、仕事の依頼にも困ることはない。それでいいんだと。

もう、それだけで人の気持ちがなんたらと上っ面の話をする気にもならなかった。
農業を含めた彼の仕事に対する姿勢そのものが、あらゆる人の気持ちに向いている。
カッコいい人じゃないか。

彼は、今日も泥と機械油とスクラップにまみれながら、作業場を訪ねてくる人と明るく
談笑をしている。

稀有な御仁である。まだまだお元気でいて欲しいと切に思う。

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