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#467 歪みゆく美観

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朝、知人らのところへ苗を届けに行く。
彼らが住んでいるのは、典型的な古民家。棚田と畑もセットになっている。

循環を感じさせる風景.JPG
 
苗が必要だという話だったので、こちらの種まきを手伝ってもらい、出来上がった
ものを必要なだけ渡す。小さな田んぼなので4枚やそこらなのだが。
 
それにしても、自分の住んでいる地域を含め、ちょっと山の方に行けばいくらでも
このような風景が見られる。新たな人に引き継がれる所、荒れるがままの所と様々だが、
いずれにせよ里山の風景というのは何処か人を惹きつける。

 
でも、何故人は里山に惹かれるのだろう?
美しいからといってしまえばそれまでだが、その美しさとは何なのか。
 
 
日本の地形が美しいのだろうか。 
 
瑠璃色の渓谷.JPG
(島根県某所)
 
 
急峻な山に刻まれる谷と、この上無い清流。
えてして、人が住むには過酷と思われる所ほど風景は良いと言われる。

 
そして、そこで食料を得て生活を維持するために古来から培われた知恵と技術。
これが加わって里山と呼ばれるものが出来上がる。

アンデスのトウモロコシ畑みたい.JPG
(同、島根県)
 
お決まりの棚田も地域によって様々。西日本は岩山ばかりで、こちらよりも更に
傾斜のきつい所に棚田が作られている。棚は、岩で組まれていて、一枚あたりの
面積の小ささや構造などはアンデス文明のトウモロコシ畑に近い。

この国の農耕は稲作ありきであり、意外なことに稲作はこのような山間地から
広まっていったという。平たい土地で大規模に行われるようになるには、灌漑及び
乾田をはじめとする土壌改良技術の発達を待たねばならなかった。水を効率良く
使うには、単順に落差のある地形の方が有利だったという事もあるのだろう。
また、外部から資材を導入することなく永年栽培を行うにあたり、山林と接する
地域は物質面でも有利である。循環型社会などという新しい言葉を用いなくとも
おおかたの先人はそれを行っていた。
 
 
 
そして、その循環には全てが必要だった。
稲作・家畜・厩肥の還元・植林・炭焼き・焼畑及び刈り敷き農法の畑・・・。
 

炭焼き教わりたい.JPG
 
それらを営む原動力は水。いや、この国ではもともと水くらいしか無い。そして
水と土だけで栽培出来るまともな食料はイネだけだ。

水は高いところから低い所へ流れる。棚田は上から下へと落ちる水で満たされ
また、水路では水車が回る。その位置エネルギが物質循環を支えていた。
 
 
いつまでも水が流れ落ちるように見える騙し絵があるが、その局所的な物質循環の
収まりぶりはそれに近い物がある。また、緻密さもピタゴラ装置のよう。
人が自然に手を加えたにも関わらず、それが非常に持続的なものであり、何処にも
破綻がない洗練されたものであるならば、美しく感じるのも当然なのだろう。
その循環を維持するために働く人々もまた非常に良い絵になる。
 
 
だが、古民家や里山というのは、その美しさや懐古性ばかりに目が行きやすい。
里山に憧れ古民家に住んだり、それを利用して商売を行うのは今日において
昔ながらの循環型生活を送ることと較べると簡単な事かもしれない。
保全運動や、景観を観光利用するというのも、まずは美しさありきなのは
理解するが、それをどう推進しようとも、日本中の里山を復元するのは
到底不可能なのは言う迄も無い。

全体が保全されるという事は、都市人口が満遍なく分散され、自給的な生活を
営む者が増えるという意味である。それはまた、これまでの文化的・消費的な生活
からある程度脱却することを意味している。そんな便利なものを捨ててまで、自給的な
生活を志す者は、そう多くはいないことだろう。

だからこそ、循環型の仕組みとは無縁の経済観のみで里山は特徴をつけられる。
それは、言うなれば【農村の消費】という考え方である。
 
古民家の別荘地を用意しました。
解体した屋敷を都心に建て居酒屋をはじめました。
棚田でわいわいイベントをやりましょう。
 
別にどれも構わない。ただ、それで終わってしまったら、里山本来の意味が全く
伝わらないし、その経済効果で土地が循環的な形で保全される訳でも無い。
例えば、お金の余っている人々が里山の別荘地を買ったとしても、恐らく家の周りは
辛うじてキレイに保ち、隣接する山林は放置するというケースが多くなるだろう。
それに、その方が事業に失敗でもされたら元に戻ってしまう。こんなことを考え
始めるともうキリが無い。

 
 
かくして、残る里山を取り巻く考え方は歪んでゆき、同時に誰からも忘れ去られた
かつての里山は自然の姿に還りつつある。
 

だが、その廃れ行く様ですら非常に絵になるのである。 
 
廃れゆく様も美しい.JPG
(千葉県某所)
 
このワビサビの景色にに皮肉を込め、

【国土の特徴と経済の仕組みが乖離してきている証】とでも言っておこうか。

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イイネ!元気そうにやってるじゃないか!

ご無沙汰しています。
おかげさまで、相変わらず元気に過ごしています。
イネも雑草も元気ですよ。これから体力的にきつい時期が来るので
持久戦に備えて早寝早起きを心がけます。