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#416 新書の紹介

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以前、取材に来てくれた児童文学の出版社に勤めている友人より、新書が届く。
その後も、幾つかの質問ややりとりがあったのだが、めでたく今月に発行となった。
 
タイトルは【スウィング】。中学三年生の野球少年が、父親亡き後の田んぼを引き継ぐ
と決意、奮闘をする物語。作中に、主人公の相棒となる形見の耕うん機が度々登場
することから、それに関する問い合わせに対応していたら、新書が貰えたという訳だ。

しかしまあ、耕うん機が活躍する児童文学というのもなかなか珍しい。
主人公は、8~9馬力クラスのガソリン管理機のエンジンを紐掛けで始動するような
猛者。管理機で、水田作業をするケースが殆ど無くなってきている中にあっても、
その昔ながらの描写に力が入っているのだから、異様に骨太な作品になっている。


マニアックな児童書だこと.JPG
 
 

管理機のモデルはクボタと思われる。だが、リコイルを取り外したところの絵をよく
見ると部分的にホンダだったりする。相棒は骨董品に近い機種という位置づけだが、
操作系がデッドマン化されている最近の仕様になっていたりするのが惜しい。
そして、かなり大型の耕うん機にもかかわらず、後部にはロータリーやレーキの装着が
無く、車軸にロータリを装着した状態で荒起こし、カゴ車輪と抵抗棒のみで代かきを
行うなど、少年が扱うには硬派極まりない仕様だったりと少々気になる箇所がある
ものの、題材を考えると、そんな事を突っ込める人間のほうが珍しい。
よく、映画などの作品中に登場する自動車や看板などで時代考証の誤りを指摘する
マニアがいるが、こと農耕機に関してなら、その数は圧倒的に少ない。つまり、
細かいところを仲間とつついて酒の肴にするという事が殆ど出来ない訳で、ここまで
書いておいてなんだが、書かなければ良かったと思う程アラ探しの対象にはなり得ない。
書いてしまったのは、単に職業病。始動のアクションや作業中の描写自体は、
全体的に秀逸なので、子供も大人も感情移入しやすいだろう。
 

とにかく、この作品で大切なのはそんな細かいことではない。
稲作文化の継承と中山間地農業のあり方をより若く、幅広い層に投げかけるという点で
あり、読むことで、それをより身近に感じる事が出来るようになるという、
【スウィング】というタイトルに相応しい明るさと健全性だ。また、著者の意かどうか
知る由も無いが、今日ではTPPなどによる農業に対する将来的な懸念などもあり、
なかなかタイムリーな時期に出た作品なのかも知れない。当然ながら安全・安心だとか
先が無いだとか、成長産業に変えることが出来るなど、読んでうんざりするような
何処の誰が言っているのかというような抽象的な定型句は一切出てこない。
 
 
全てはやるものの意志。作中の少年は、それを存分に表現している。
それが現実であっても、やれば出来る。そして応援してくれる人も必ず現れるのだ。
興味のある方は、是非一読しておくと良いだろう。 
 
 
<書籍>
【スウィング】 作:横沢彰  絵:五十嵐大介  発行:童心社

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