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#251 やってみもせんで

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農作業の負荷も、少しは落ち着いてきた。
以降は、収穫に備えてコメを乾燥調整するスペースの建設を行い、機械の設置を
行わなければならない。果たして、こんなタイミングで間に合うものだろうか。

何はともあれ方々と相談が必要だ。そこで、ガンダ屋兼稲作農家のオヤジの所へ
電話をかける。

 
『もしもし?お世話になります、いよいよ作業場を建てないといけない状況に
 なってきたので、相談に乗って頂けませんか?』


「いいけど、お前今時間あるか?」
 

『はい。まずはそちらにお伺いします。』
 
 
「いや、それもそうだけど、ちょっと直ぐに手伝って欲しい事があるんだ。」
 
 
『かまいませんが、何でしょう?」

 
「ちょっとブルを拾いにいくんだけど、腰を痛めててな。バッテリーの脱着とか
 そんなのを手伝って欲しいんだよ。一人じゃやる気しねえんだ」
 
 
 
まあ本来が親切な人。仕事を手伝うのは当然。
それに、あの人の仕事には興味もある。そこで早速出かけた。
 
 
 
到着すると、だいぶやつれたブルが置いてある。


これと同じのを拾う?.JPG
 
 
「今から、これと同じものを確認しに行くんだ。重機は同じものを2台揃えるのが
 俺のやり方だからな。」
 
 
『それは何処に置いてあるんですか?』
 
 
「すぐ近くだよ。コイツのバッテリー外して持ってく。ちょっと工具取ってくる
 から待ってろ。」
 
 
 
そして、この人は作業場の奥へ歩いて行ったかと思うと、今度はフォークリフトに
乗って戻ってきた。いったい何を・・・。

  
ちょっと工具もってきた.JPG
 
 
パレットには、雑然と工具が置いてある。相変わらずやることが豪快過ぎる。
いや、バッテリー外すだけなら、スパナ2~3本でいいだろとも思うが、
こんな発想をするからには、如何に普段から重作業ばかりしているのかが簡単に
思い浮かぶ。
 
 
作業場やヤードは、無秩序に散らかっているようにも見えるが、よくよく考えて
みれば、オヤジの作業しやすい環境である。しかし、他人にとっては複雑怪奇極まり
無く、また危険でもある。こういった場所で作業を手伝う場合は、特に注意が必要
なのだった。
 

呆気に取られる暇も無く、速やかにバッテリを外し、農薬やゴミが山と詰まれた
軽トラの荷台に工具を放り込み、二人で現場へと向かう。
 

 
件のブルは、近所の山砂を採取する現場に放置されていた。
入り口からブルまでは、2m以上にまで伸びた雑草が茂っているが、オヤジは
どんどん軽トラで草をなぎ倒しながら突っ込んでいく。
 

「こんなとこ歩いていかねえよ。マムシに噛まれる。」
 
 
なるほど一理ある。
 
 
ブルは旋回不能になってからしばらく放置されているようだ。
バッテリを接続して、メインスイッチをONにしても、インジケータランプは点灯
しなかったが、エンジンそのものはグロー(予熱)無しで一発始動。

見た目はボロでも、アワーメータ(運転時間計)は650時間。砂地で使われて
いたので足回りの消耗は激しいが全体的にはまだいけそうだ。

一撃始動.JPG 


買取価格は12万円とのこと。お金をかけずにちゃんと走行出来るようになれば
しめたもの。
 


おおなめくじみたい.JPG

早速動かしてみるが、確かに旋回不能。
サイドクラッチレバーは、引いてもスプリングの手応えしかない。クラッチの
ライニングが張り付いたか、消耗しきったかのどちらかと思われる。
このままでは、作業場まで持って帰る事が出来ない。とにかくローダー(積載車)
に積めるよう、まともに走行出来る状態にしなければなるまい。


早速、操縦席下のメンテナンスカバーを外して調整を試みることに。
 

クラッチ調整.JPG

調整そのものは簡単だが、ボルト類が全て錆付いているので、カバーを外すのも
ロッドの長さを変えるのも意外と大変。ひたすら、ネジ部には作動油をかけまくって
なんとか回す。

この状況なら、素人はCRCをかけまくると思われるが、オヤジに言わせれば
ここなら一番安い作動油で充分。コストのかかる油脂は、状況を選んで使わな
ければ無駄が多い。
 
 

『これ、結構時間かかりそうですね』
 
 
少しずつネジ山を潰さないように締めたり戻したりしながらの調整が続く。
 
 
「やっぱり固着がきついか。ワイヤーブラシ入ってないかなぁ・・・あ、ないや
 取ってくる。」
 

そいう言うと、オヤジは軽トラに乗り込み、草ムラの中へと消えていった。
車が草の中に消えていく光景は、やはり変なのだが、戦車が森の茂みから
突然現れるという絵なら別に違和感は無い。彼は、根っからの重機オペレータ
なのだと思ってみれば、だんだん普通に思えてくる。いや、そうやって強引に
納得しているだけかもしれないが、もはやどうでも良い話だ。
 
なんとか出せそうです.JPG
 
 
戻ってくるまで、ひたすら調整を繰り返し、ブルを動かして旋回を試みるが
相変わらず曲がってくれない。けれど、コイツの操作自体はコンバインとさほど
変わりはないので楽だ。重機だからと言って、尻込みする必要は無さそうである。
 
オヤジが戻ってきた頃は、相当まで調整も進む。
動かしてみたら、時折反応して旋回するようになったのだが、ブレーキ自体
(旋回クラッチを連結させて作動させる走行用ブレーキ)も効きっ放しになって
いることも発覚。この日はここで作業中断。しかし動かせる目処はついた。
  
 

 
「それじゃ、明日の朝お前の所を見に行ってやるよ。」
 
 
作業場に戻って、やっと工事の相談に入る。
向こうにとっては儲からない相談。この一言だけでもありがたい。
 
 

翌日の早朝、生コン事務所に現れたオヤジと建物のレイアウトを相談。
ついでにと、何かの格言を渡される。

まさかの格言.JPG
 
 
本田宗一郎の格言。昨晩に、本を読んでいたら、これが載っていたので写して
きたのだそうだ。まさか、正にこの人が起こしたメーカーを辞めて、稲作を始めた
というのに何とまあ。会社ではあまりまともな仕事はしていなかったのは確かだが。

でも、オヤジはそんな皮肉を言いたかったのでは無い。

【どうせやるのなら、理屈をこねて結局は人の力ばかり頼るよりも、自分で出来る
 限りの事をやらないと何も見えてこない。そうなくては生き残れない】

と伝えたいだけ。

自分にとって将来必要になるスキルはまだ山ほどある。だから、それを覚えるのに
力を貸す事は厭わない。けれども、ただ甘えるのなら認めない。
彼が重視しているものは、勿論お金どうこうの問題では無く、マインド面での
つながり合いである。この姿勢を持っている人に対して、無礼は許されまい。
 
 

まだまだ知らない事ばかりだが、工事も出来る限り自力でやってみよう。
折角、格言通りに実行が出来る地盤をこれまでに築き上げてきたのだから。
 
 
 

格言は知っていても、何も出来ずにいた頃とは、えらく心境が変化してきたようだ。

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コメント(5)

とっても面白い。
飯田のおやじさんと、また話ができそうですね。
 11日、バスで行きますから。
  たつお 

とても楽しく、読ませていただきました。去年父が他界し、農地を何とか生かそうと現在悪戦苦闘をしています。農家の娘のくせに、虫が大の苦手で悲鳴を上げながらこの先どうなる事やらと他人事のように、心配しつつも「本田宗一郎」の言葉。父を思い出してしまいました。手作りの農器具を何とか使えるようになりたいと思っています。

タジオ さん

少々レスが、遅くなって申し訳ありませんが、はじめまして。
日々気づいた事を忘れないように、つけ始めたブログですが、読者の方が
増えるのも嬉しいです。書いていて、この先どうなるのかはさっぱり分かりませんが
引き続き記録をしてまいりますので、今後ともどうぞよろしく。


こちらも、やった事が無いことや、誰もやらない事ばかりしていますので、
タジオさんの手作り農具が非常に気になります。

それにしても、似たような事をやろうとしている方がいると応援したくなります。
お父様から引き継いだフィールドで、存分に色々と試してみてください。
虫は・・・そのうち慣れると良いですね。

コメントへの返信ありがとうございます。よちよち歩きの運営ですが、大切な土地なので何としても、活用したいと思っております。農具は、細かいものがたくさんあるのと、私には判断がつかない物があるので、取りあえずは整理をしてひたすら掃除に明け暮れています。それにしても、メカに強いのは凄い、と憧れてしまいます。大きな乾燥機が2台あり、やはり処分しましたので、私にとっても少し複雑な気分でした。
アメブロにて素人の奮闘記を更新しております。http://profile.ameba.jp/tajio-adonis/
コメントが、上手く送信できませんでしたので、重複してしまったら、お許しください。

タジオ さん

毎度コメントありがとうございます。
ブログの方も拝見させていただきました。あ、そちらのブログにお返事を書き込めば良かったの
かもしれませんが、書き始めてしまったのでご容赦ください。


本当に、お洒落なブログで驚きました。田んぼに入り浸っている私が忘れかけている感覚も、
少しはこれで取り戻せたかもしれません。明日も泥まみれになるので、ほんの一瞬ですが・・・。


そんなセンスの良い方が、どのようにこの泥と機械油にまみれたブログに辿り着いたのかは、
最初、釈然としなかったのですが、私と同様に農地の有効な利用方法を模索している方に対して、
そんな野暮な事を考えるなど失敬極まりないなとすぐに思い直した次第です。

離農される方が増えても、農地は残る訳ですから、今後はタジオさんのような取り組みが更に
必要になってくるでしょう。
そんな日が来ても、私に出来ることは相変わらず機械面のサポートだけかもしれませんが、
こういった取り組みが増えるよう、互いにがんばっていきたいものですね。