田舎日記ホーム >>> 田舎生活 >>> 新規就農者ブログ >>> #206 田植えどころじゃない

#206 田植えどころじゃない

| トラックバック(0)

土曜日の朝、田んぼの見回りに行くと、昨日まではなみなみと水を張ってあった
田んぼの水が、ほとんど干上がった状態になっている。この漏水の激しさは、
モグラのレベルではない。直ぐに、暗渠が老朽化して表土の陥没が起こったの
だろうと察する。全く、いつでも田植えが出来る状態になっていたのに、
これは、即刻修正しておかなければ、被害が拡大する一方だ。


勘弁してください.JPG

田んぼ奥の方を見に行っててみると、やはり大穴が開いていた。
物凄い勢いで、ここへ水が吸い込まれている。

 
 
これでは、かなりの規模で、田面下が空洞になっていることだろう。
確認すべく、暗渠の栓の周囲も掘ってみると、案の定である。

えぇ~ モグラじゃない.JPG


とにかく、出来る限りの範囲をすべてほじくり返し、修正しなければ耕作は
不可能だ。考える間もなく、ここ一番の重作業が始まった。

  

とにかく堀りまくって、空洞の部分を把握し、そこを全て塞がなくてはならない。


やるしかねぇ.JPG

陥没が起こる仕組みは、暗渠配管の周囲に埋められた竹やスクモ(モミガラ)木などの
資材が、経年変化で劣化して少しずつスカスカの空洞が広がっていく事による。
従って、対処するには田面下の暗渠部分まで掘り下げる必要がある。

暗渠パイプが埋まっている深さは、たいがい1m前後。田んぼの土が軟らかいとは言え、
そこまで人力で掘るのは骨が折れる。
   
 

 
掘った部分には、空洞からも、上からも次々と水が入ってくる。


掘れませーん.JPG
 
この水を速やかに排出しなければ、作業は進められない。幸いにして、この田んぼは
用水路が隣接している。一連の漏水で、グズグズになっている土手の修正も兼ねて、
用水路まで、溝を切って排水を行う。

アゼ切れわんわん.JPG
 
傾斜部分については、どこからでも土を切り取りやすいので、真っ直ぐ掘り下げる
よりかはだいぶ作業が楽。と言っても、埋め戻す際は成型が難しいのでプラマイゼロ。
 
 
ここで、大量に用意してきた肥料袋を使用して、土嚢を作る。
空洞部分にはこれを詰め込んで修正していくのだ。

土嚢はいくつ?.JPG

こういった使い方が出来るので、ぶ厚くて破けにくい肥料袋は重宝する。
大量にあっても全ては捨てずに、ある程度のまとまった量は確保しておくと良い。


肥料袋には、用水路の底に大量に溜まっている良質の砂を詰め込んだ。
もしも田んぼや土手の土を使えば、切り取った部分の埋め戻し作業で、土が不足する
ことは目に見えている。
 
 
ここで、そして、田んぼに土を入れたい場合は、業者から砂を満載したダンプで
来てもらわなくても、用水路から砂をちまちまと戻せばよい事も知る。
全くと言ってよいほどメンテがされていない用水路は、他所の田んぼから少しずつ
出てきた砂の宝庫だったのだ。転んでもタダでは起きれない。今後も存分に活用
させてもらうことにしよう。

 

土嚢を摘める際は、投げ込むだけでなく、しっかりと踏み潰して詰めていくこと。

方言 ふんじゃぶす.JPG

互い違いに組み合わせて強度を持たせ、その隙間は、比較的細かい土をぎっちりと
詰めておく。土嚢が見えなくなるまで土を被せたら、今度はその上から、全力で
土ごと踏み潰す。すると、更に全体が沈んでいくように詰まっていく。それを繰り
返しながら、もともとの高さまで戻していく。

川砂も、土嚢も重ければ、踏み潰すのも大変。こんな時、稲作はドカタ仕事と同じ
なのだなと思う。
 
 
夕刻に、なんとか復元完了。

止まっておくれ.JPG

これで、一晩水を絞り、翌日に注水して、漏れの有無を確認する。漏水がストップ
していても、田んぼは、丸二昼夜に渡って表土が露出してしまうので、代かきに
ついてはやり直しとなる。


はぁ。他にも空洞がまだあるとすれば、重たいトラクタはもう入れない方が無難
だろう。しかし、既に軟らかく深い土になってしまっているので、その作業負荷を
考慮すると、オイル漏れの応急処置を行っている、あの管理機では分が悪い。
一難去ってまた一難。思案ばかりする日が続きそうだ。
 

そうそう、土嚢による補修では、まともに機能するのは一年程度、
稲刈りが終わって冬になったら、結局は暗渠のやり直しをしなければいけない。

一日終わったよ.JPG

帰る前に、いつもの景色を眺めながら思う。

水田の乾田化、それは灌漑用水の整備と大型機械の普及、生育に応じた効率的な
施肥と登熟管理には必要不可欠なものだ。また、それらの技術発達に呼応して
水田の乾田化は更に加速していった。

そのような栽培方法が、広く普及する事で、コメが大量に安定供給されるように
なったことは間違いない。そして、それは同時に米価が下がり、生産調整が必要と
なった要員の一つでもある。

しかし、現在の米価では、作業機が土を掘ったりして圃場を痛めた箇所を修繕したり、
乾田の維持を行うといったコストまで考えてみれば不十分なものかも知れない。
それでも、稲作専業者は大規模化の道をひた進める事で、その収支を合わせようとして、
ジレンマに陥っていく。大規模化すると、設備も大型になるのをはじめ、諸々の維持
コストが、雪ダルマのように膨らんでいくのだ。これに対処するのは、並大抵の努力
では済まない。


そんな中でも、特に谷津田では乾田化を進めれば進める程、無理が生じるように感じる。
作業効率は良くなっても、平坦な圃場でのそれには遠く及ばず、投資に見合った収量の
増加を確保する事が困難なためである、


ならば、不用意な増収を見込まず、機械や資材に無理にカネをかける事のない管理と
いうものを真剣に考えなくてはいけない。これが達成出来なければ、中山間地の稲作は
生き残れないと言っても過言では無さそうだ。
 
 
昨今は、とかく地域の特色を生かした産品のブランド化や、担い手育成のための
方策ばかりが騒がれているが、先に土地を守る農家がいなくなっては全ては夢物語。
真剣に農業を守ろうというのなら、こういった現場サイドからの発信も、地味ながら
続けていく必要性がある事を再認識した次第である。 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://inaka-nikki.net/mt/mt-tb2.cgi/1116