田舎日記ホーム >>> 田舎生活 >>> 新規就農者ブログ >>> #115 100年前からエコでした

#115 100年前からエコでした

| トラックバック(0)

農業青年部の産業祭対応ということで、日曜日は焼きそば出店の手伝いを
してきた。思いがけず、ここで面白い光景を見る。


噂には聞いていた、農発(農業用発動機=昔の汎用定置エンジン)の運転会だ。
興味深いものが多いので、出展者の方についつい色々と尋ねてしまう。

プチ運転会.jpg


こんなローカルな町(失敬!)のイベントへ、わざわざやって来てくれるとは驚いた。

パシュン!、スパン!という、歯切れ良く心地よい間隔の音が、来場者の
気を引くらしく、この一角は終始人がいる状態。
機械に興味がない人も、ここでは立ち止まってしまうようだ。


しかし、普段にも増してマニアックなものなので、ここから先は

『農発が、如何なる機械なのか』

ということを簡単に説明する必要がある。

これらは、大正期から戦後10数年位の間に生産された作業用エンジンである。
エンジンは単体で台座に固定し、はずみ車に付いたプーリーにベルトを掛けたり、
軸に継手をかまして動力を取り出すことで、脱穀機やポンプなど、様々な作業機を
駆動することが出来る。

無論、現在の汎用エンジンも考え方は同じであるが、エンジンは小型・高出力化
されており、作業機への搭載性及び取扱い易さも飛躍的に向上した。これにより、
【定置で使用するエンジン】という制約が外れ、携帯出来る小型のもの、あるいは
自走しつつ作業を行う作業機との組み合わせが一般的なものとなった。

この小型汎用エンジンの普及と共に、農業の機械化が促進され、作業機自体の種類も
増加をし続けた。今日ではほとんどの場合、最初から作業機とエンジンが組み合わさ
れた状態 (例 :耕うん機・発電機・刈払機など)で、一つの製品として扱われる
ようになっている。


ちなみに、エンジン単体での需要とは作業機メーカーが、エンジンメーカーから供給を
受けるという事であり、当然エンジンメーカーよりも作業機メーカーの方が多い。

農発が盛んに製造されていた時期、国内では西日本を中心にメーカーが乱立していた。
戦後の2輪車製造も、静岡を中心に同様の様相を呈していたが、農発の場合は、趣味の
対象として認知されるまでに時間がかかったことから、その生産実態や、遍歴などに
ついて考証が深まっていない部分も多い。それが、今になってマニアを生み出す要因の
一つなのかも知れない。

・・・何の資料も用意せず説明できる自分が少し嫌になる。

とにかく、現在の農家は両手では数えられないほどの、エンジン付き作業機を持っている
ことが普通だが、農発の時代は、″虎の子の一基″ だったことは想像に難くない。

大きく重い定置機関故、こなせる作業が限られていたとしても、人力に頼る作業が多い
中にあっては格別の貴重さを持っていたことだろう。


全損潤滑 非循環水冷が基本  .jpg

構造は原始的。とは言え、良く技術家庭科の時間に習うエンジンとも構造は
かなり異なる。

まず、動弁系は露出。たいがいの機械の潤滑油は、機構に直接滴下させ循環しない。
冷却方式は、大きな鉄の鋳物のお椀に水を入れるだけ。水が蒸発したらまた足す。
点火装置は巨大なマグネトー箱だが、回転検出ではなく、リンクロッドでコイルの
一次電流を開閉しているのが面白い。

これらの、色々な部分が動いて見えるのが、なかなかコミカルなのだ。
全ての動きが動物っぽいというか、作り手の意思が伝わってくるというか。
無骨なのは、実用しか考えていないから当然なのだが、逆にシンプルで美しく
見える機能部品の集合体なので、飽きもこない。

こんなに面白そうなら、何年か前、どこかの農家さんで『持ってっていいよ。』と
言われたド鉄の塊を貰っておけばよかったと、少し後悔。


それで、こんな機械の中にもやはり例外はいる。

もうすぐ100歳.jpg

この縦型のエンジンは、ストン・ストン・ストン・パン! というような
非定常な回り方をする。不思議に思って尋ねてみると、

『負荷が入ったら普通に回るんだよ。それ以外は、4回に一回位しか爆発しない。』

とのこと。なんと、今で言うなら【気筒休止】メカではないか。しかも単気筒。
見ていると吸気バルブはほとんどお休み。時々、思い出したように動くだけ。
超低速回転で、重いはずみ車(フライホイール)をトントンと回しているからこそ
出来る芸当とは言え、仕事しないときは燃料を食わないのは、使う側にとっても
願ったり叶ったり。

おじさんは負荷をかけた時の音を聞かせてやると、手ぬぐいをプーリーに押し
付けてくれたが、ストールしてしまった。展示用で、燃料のセッティングを薄く
してあったそうだ。


それと、機構の露出部位が少ないので、もしやと思って聞けば、

『全損式潤滑で無い』

だそうだ。この機械、来年で100歳というから天晴れだ。この先進性に土下座したく
なる。やっぱり、昔のアメリカ製は凄いとしか言いようが無い。
ちなみに国内にはこの1台だけだそうだ。


エコエコ世間は騒がしいが、この機械は、そんなのハナで笑い飛ばすかのように
一日中この機械は斜に構えた音を奏で続け、カタカタと横にずり動いていく。
おじさんは、それをせっせと元の位置へと戻し続けるのだった。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://inaka-nikki.net/mt/mt-tb2.cgi/857