竹NPOのスタッフと、先日電話で話をした。
スタッフ 『そういえば、人を探しているお米農家さんがいるんです。』
太郎 「え、どんな農家さんなの?」
『まだ僕も会ったことは無いんですけど、兼業の方です。栽培規模が五町分で、
現在は無農薬栽培が一町分。残りが減農薬栽培。ゆくゆくは全て農薬を使わず
に栽培したいって。』
「兼業で無農薬の五町分は相当大変でしょう。どんな田んぼかにもよるだろうけど。
場所はどこ?」
『うち(竹林整備現場)から近いです。車で10分くらい。』
「!!」
あの地域なら、多分谷津田だ。俄然興味が湧いてくる。
「それ、すごいな。」
『それで、現代の稲作状況にも不服があるようで、良いお米を栽培して、自分達で
売っていきたいって話です。そのために、一緒に栽培や販売をやる人がいないかと
探しているんです。』
なんだか、どこかで聞いたような話。そして恐ろしく気合の入った方のようだ。
これは確かめるしかない。
「じゃあ一緒に会いに行ってみよう。」
幸にも、翌日OKとの返事が来る。今日訪ねることができなければ、訪問は田植え
後の来月末になってしまう。今日は雨で、まともな作業が出来ないのも助かった。
朝、苗を確認してそのまま現地へ向かう。

見るからに活発そうな明るい農家さん。早速上がらせていただき、お話を伺う。
そして判ったのは、考えて実行しようとしている計画が、ほとんど自分と同じで
あったという事。更に、その規模も壮大なものだった。
物凄く手短に説明するならば
【意欲のある若者を募り、稲作を中心とした栽培技術・機械・資材・居住面でも
強力なバックアップ体制を敷いた上で農地を任せる。そして、お米を適正な
価格で協力して販売し、利益を上げることで新たな就農者を定着させて、その
土地の農業を存続させる】
というもの。飽くまでも、人を育てて先へ繋げていくという考え方である。
また、ご本人は近い将来に現在の仕事を終え、これに専心する構えだ。
そう。この一年間で、自分は新規で稲作を始めることの困難さを身を以って知った。
こんな仕組みがあれば良いのにと、常々思っていたのだ。なにしろ新規就農に関する
制度は、こう言っては申し訳ないのだが、【新規の稲作自体を想定していない】のだ。
コメが余っていて農家も儲からないのは判るが、主食にそんな扱いをされてはあまり
納得出来るものでは無い。
『新規じゃ出来ないから止めな。』 この一言を何度言われたか。
みなさん、余りにもさらりとこれを言い放つのだから、こちらの悔しさも尋常でない。
どうしても、こんな機会があるとその鬱積がつい一気に噴き出てきてしまう。
うかうかしていると、全国の中山間地にある圃場の放棄は更に進み、栽培技術の
伝承も出来なくなる。そうなったら、ある時にコメの需要が伸びたとしても、
いきなり対応は出来ないのだ。ならば、例え就農しないまでも、ヤブを田んぼに
戻したり、小規模でも良いから栽培するといったスキルを持つ者が増えたって良い
のではないだろうか?
【中山間地意外の農地で、集約管理を徹底すれば自給率が上がる】という考えは、
エネルギを他方に依存している実態や、資本投入と回収といった観点から見てみると、
農業で最も大切な【持続性】という面だけでも、まだいくつかの疑問が生じてくる。
そして、その事について声を大にして指摘する人はまだ少ない。
全体的に食料需要への危機感が希薄な状態が続いたまま、安全性への不安だけが
先行している。
エネルギを大量に投入して栽培した作物は、石油が化けたようなもの。それを以て全てが
自前のものだとは言い難い。
そして、低コストで大量に育てられたものは、例え害が無くとも、その栽培過程や、
育てた者の意思が消費者に伝わりにくくなる事も事実。栽培方法や加工方法によっては
下手をすれば、工業製品と同じように見られかねない。しかし、どんなに有難みや興味が
湧かないものであっても、農産物は、人間と同じ生物である。人間の都合に挟まれた挙げ
句、ただの【物】として見られてしまう生き物とは、何とも不憫である。
だから、資本を大量に投入しても、【売り物】にならなければ簡単に見切りをつけられて
しまう事も起こりかねない。もしも資本が撤収してしまったら、残された広大な農地は誰が
管理するのか。
また、商品のラベルに栽培履歴のURLやバーコードを表示するという義務があるのは、
法に準拠した作業を栽培から流通に至るまで遵守している事を消費者に示す必要がある
からだが、それは安全を確認する方法の一つに過ぎない。しかし、店頭販売では、あた
かもそれが安全を証明する唯一の手がかりとして受け止められる事になる。もしも、
それに対して疑問を抱かれるような事態が訪れれば、法はたちまち単なる事務的な処理
へと変化してしまう。それでは、いつまで経っても誰も安心などしてはくれまい。
無論、安心できないものを高く買う者がいるはずもない。そうして悪循環に陥ってゆく。
だから、作物に対する生産者と消費者の意識を、出来るだけ近いところまで持って
いかなければいけない。そのために出来る事は何だろうかと、しきりに考えていた。
その回答として、自分は【栽培することに興味がある】という人を受け入れる事に
したのだ。その考えの、更に上を行くものを目の当たりにして、感動せずにはいら
れない。そんな準備をこの農家さんが一人で開始しているのには、ただ驚嘆する
ばかり。しかも、その方は同じ県内にいたのだから、やっぱり世の中捨てたものでは
ない。
それで、現在は新たな集落営農の形態を構築するために、まず設備を整えている所
だとおっしゃる。そして、その目的は、後継者の育成のみではない。高齢化と後継者
不足から田畑を管理しきれなくなり、管理をライスセンターに依頼する農家が増え
続けているという地域の事情も鑑みてのこと。この地のライスセンターは、もはや
パンク寸前の状態だとか。

それで、まず用意したのは乾燥機が3機。
将来、張り込み石高が増加することも予想して、いずれは別に天井の高い作業場を
設けるつもりとの事。